さいごの色街飛田 (新潮文庫) epubダウンロード無料

さいごの色街飛田 (新潮文庫)

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によって 井上 理津子
4.6 5つ星のうち76 人の読者
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内容紹介 人間の性むき出しの街で懸命に生きる人々。 取材期間十二年。傑作ルポ、待望の文庫化! 「おにいちゃん、遊んでいってや」 客引きのおばちゃんの手招きで、男が一人、また一人と店に上がる。 大阪に今なお存在する「色街」飛田。 経営者、働く女たち、客、警察、ヤクザらの生の声に耳を傾け、 「中」へと入り込んだ著者が見たものは、 人間の性むき出しの街で懸命に生きる人々の姿だった。 十二年にわたる取材により、一筋縄ではいかないこの街を活写したルポルタージュの傑作。 目次より はじめに 第一章飛田に行きましたか ある日の飛田/普通の男/「神技」のよう/二十分間の疑似恋愛/ 「不倫するより健全」/エリートサラリーマン/百五十回行った男/ 「当たり前」だった時代/無礼講OK/男友達に上がってもらう/老人ホームの車を見た 第二章飛田を歩く 飛田への道/抱きつきスリ/大門と嘆きの壁/「料亭」と「鯛よし百番」/ 飛田の“外”意識/「おかめ」のマスター/深夜の「おかめ」にて/ 語ってくれたおねえさん/飛田料理組合/菩提寺 第三章飛田のはじまり 市会議員の汚職/反対運動と、知事の「置き土産」/大門と開廓当初の街/ 「居稼」の仕組み/飛田の特徴と花代/娼妓は売られてきた/前借と阿部定/ 娼妓の暮らし/難波病院と篠原無然/楼主たち/飛田会館/戦前の最盛期 第四章住めば天国、出たら地獄――戦後の飛田 焼け残る/赤線、青線、ポン引き、カフェー/売春防止法/苦肉の策/ 一斉取締り/「アルバイト料亭」へ/一九六〇年、黒岩重吾レポート/西成暴動/ 女性の「保護」/「アホほど儲かった」/住めば天国、出たら地獄/喫茶店ママの「女の子」雑感 第五章飛田に生きる 「さわったらあかん」の掟/夏まつり/原田さんの本当の経歴/開かずの間/ 舐めたらあかん/古びたアパートで/夫婦の履歴/欲と二人連れ/ 不動産屋にて/初めてのヤクザ取材/組事務所を訪ねる/求人 第六章飛田で働く人たち 事務所再訪と、消えた「おかめ」/料亭の面接/西成警察、大阪府警/ ビラを配る/二十九歳の女の子/元“お嬢”/彼氏は「借金まみれ」/まゆ美ママ/ 飴と鞭/商売哲学/タエコさん/原田さんとの再会 あとがき 文庫版あとがき 解説桜木紫乃 主要参考文献 井上理津子(いのうえ・りつこ) 1955(昭和30)年、奈良市生まれ。人物ルポや旅、酒場、出版などを主なテーマに執筆を続ける。12年にわたる取材を経て、2011年に刊行した『さいごの色街飛田』は大きな話題を呼んだ。他の著書に『遊郭の産院から』『名物「本屋さん」をゆく』『旅情酒場をゆく』『はじまりは大阪にあり』『大阪下町酒場列伝』『親を送る』『すごい古書店 変な図書館』『夢の猫本屋ができるまで』『いまどきの納骨堂』、共著に『関西名物』『新版大阪名物』などがある。 内容(「BOOK」データベースより) 客引きのおばちゃんの手招きで、男が一人、また一人と店に上がる。大阪に今なお存在する「色街」飛田。経営者、働く女たち、客、警察、ヤクザらの生の声に耳を傾け、「中」へと入り込んだ著者が見たものは、人間の性むき出しの街で懸命に生きる人々の姿だった。十二年にわたる取材により、一筋縄ではいかないこの街を活写したルポルタージュの傑作。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 井上/理津子 1955(昭和30)年、奈良市生れ。フリーライター。京都女子大学短期大学部卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 続きを見る
以下は、さいごの色街飛田 (新潮文庫)に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
私は本書に著されていることが全て真実であるとは思いません。まずは商業出版書物である以上、脚色を想定して幾らかは割り引かなければならない点が一つ。更に、著者の恵まれていたであろう生い立ちや社会的立場からくる(踏み込めない)苦界との隔絶。それ故、取材対象者が口にする情報の信憑性や妥当性などに向けられる疑義。これらを鑑みた場合、正直、必ずしも現実を正確に照らし出したものではないと感じるのです。また様々な事情により著せなかった事物もあったのではないかと推測します。加えて、著者は自身の人生については本書内でも明かすことは殆どないので、子供がいるらしいということ以外、人生の礎や拠り所を何とするのか、といった人生観や、社会をみる際に用いる眼鏡の有無または種類がよくわからないのです。ニュートラルな立場を装うための手法かもしれませんが、読者のほうでも補正をかけにくいので、額面通り素直に受け取ってよいのかは戸惑う点でもあります。ですが、これを私小説的読物として評価するのならば、著者が12年もの長期に渡り実際に飛田という『さいごの色街』に足を運んで得た体験談として、その仕事は称賛に価するものだと思いますし、出来ばえについても相応の興味深い本になっていると思います。著者は外部の女性として飛田と接しています。売買春には否定的ですが、それは非難や排斥といった強硬な態度で臨むものではなく、手放しで賛同できないというスタンスであることが窺えます。これは刑法の枠外に在る社会通念を斟酌したものだと思いますし、或いは本音と建前のバランスをはかった御都合主義的な落し所なのかもしれません。斯くいう私も同様の態度を示すことが大方です。そのような立場で著されている本書は、利用案内とか運営の仕組みなどといった情報をつぶさに提供する類の報告書ではありません。当然、著者が実際に料亭に上がって遊ぶという直接的な取材は叶いませんので、男女の具体的なやり取りや遊戯の仔細な説明はありません。そこが説得力に欠ける点だとは思いますが、逆にいえば気持ちよく「抜く」ことを主目的とした享楽的価値観には流されず、人は何故飛田に集うのか、どうして飛田が成立しているのかを冷静な視点で捉えることが出来ていると思います。『飛田のはじまり』から数章で紐解かれる風俗史はやや退屈に感じますがプロならではの調査力で資料に当たっていて感心します。取材の中で著者は嘘を吐いたり吐かれたりします。約束を破られたり悪態も吐かれます。でもこれはお互い様であり、取材者と飛田生活者のそれぞれの我が身可愛さからなる防御動作なので仕方がありません。著者もそのあたりは強かで、取材開始時の年齢が恐らく四十半ばで脱稿時は五十代後半とみられ、職業も相俟ってかなり世慣れしています。ですが、それはガツガツした活力がもたらすものではなく、著者の人間的魅力から醸成された対人能力のなせる業だと思います。女性としての魅力もあるのでしょう、料亭のママから「おねえさん」としてスカウトもされます。描かれている内外の人々もなかなか魅力的です。料理組合の幹部、人のいいヤクザの親分、別の組のインテリヤクザ、囮面接に協力する頼もしい友人、その友人が魅せられた料亭のママ、終盤で飛田哲学を謳う男前のママ、そのママの下で従順に尽くす若き曳き手の「おばちゃん」。なかでも、かつては料亭の継嗣として潤ったという人情家である居酒屋のマスターとは本当の友人となり、いつしか愛称で呼ばれるまでの仲となっていきます。そしてそれら登場人物との交流は、終幕に向けて密度を増してどんどん加速していき、ここが読み応えとして実感させられものとなっています。プロローグで『鯛よし百番』という、建物が府の有形文化財として登録された正真正銘の料亭(飲食のみの営業)について触れており、そこが著者と飛田の出会いだということです。遊郭建築の古い建物は私もwebで飛田を知るきっかけとなったもので、その外装の時代性とキッチュな内装の淫靡さに魅せられた著者が「取材対象にできるだろうか」と続く町並みを歩き回った感想が「とんでもない」というものであり、同時に「この町に近づいてやろう」というものだったのです。そこには売れる本作りという利欲よりも、この不思議な町をもっと知りたいといった著者の琴線に触れる本能的な興味があり、そのモチベーションが彼女を突き動かしたのだと思います。たしかに人は「古き良きもの」(善悪論は別として)に惹かれます。それは精神医学的な研究で解明されていることなのかもしれませんが、そういう理屈だけで説明しても人に理解させるだけの説得力はないでしょう。人間はやはり自分で感じ、その上で実際にそれが自身にとって好いものなのか判断しなくては治まりません。エピローグで著者は「飛田へは、お金を落しに行くならいい、そうでなく、物見なら行ってほしくない」との願望を読者に対して吐露します。これは飛田で生きる人たちをそっとしておいてほしいという「飛田愛」から発せられたものかと思いますが、しかしそれは無理なこと。著者自身が初めて飛田新地に触れたその感激を、読者も自分の足と目で確かめたいのですから。

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